ヤグノブ渓谷について
8世紀ごろイスラム教を信仰するアラブ人の侵攻により敗れたソグド人は、次第に歴史の表舞台から姿を消しました。しかし、彼らの一部が生き延び、山奥へ住み着いたと言われています。
その場所が今回訪れた「ヤグノブ渓谷」なのです。
ヤグノブ渓谷はタジキスタン北西部にある渓谷で、少数民族ヤグノブ人が伝統的な暮らしをしています。
そして彼らヤグノブ人は、かつてシルクロードの交易を支配していた商人「ソグド人」の末裔と言われています。
彼らソグド人は商才に長け、中央アジアを本拠地として中国やアラブを行き来し、商人として活躍していました。中国では「胡人」と呼ばれ、今では胡麻や胡瓜、胡椒が名前として残っています。
ヤグノブ渓谷の孤立した地形と限られたアクセスによって、ヤグノブ渓谷の人々は独自のライフスタイル、文化、そして古代ソグド人と密接に関係するヤグノブ語を守ることができました。
今回は、そんな隔絶された秘境に生きるヤグノブ人に会うために、ヤグノブ渓谷へ行った記録を紹介します。
ドゥシャンベ→タクフォン
僕らはドゥシャンベからヤグノブ渓谷を目指しました。
ヤグノブ渓谷へ行くには、まずヤグノブ渓谷の入り口であるタクフォンへ行かなければなりません。
ということで、ドゥシャンベからヒッチハイクでタクフォンを目指すことになりました。
それにしてもタジキスタンは絶景が多いな。
ドゥシャンベの郊外でそっち方面へ行くトラックを見つけ、トラックに揺られ数時間、最初の目的地タクフォンに到着しました。
↓シェアタクシー乗り場
ドゥシャンベの郊外にあるシェアタクシー乗り場からでも、タクフォン行きのシェアタクシーを見つけられるかと思います。
タクフォン→マルギブ
タクフォンからは国道を抜けて、険しい砂利道へ入ってヤグノブ渓谷を目指さなければなりません。
もちろん、そっちへ行く車なんてほぼいないので、ひたすら車を待つことに。
小一時間待っていると、一台のトラックが止まってくれました。
数時間、険しい道に揺られながら、マルギブ村に到着。
トラックの運転手さんに紹介してもらった宿で一夜過ごすことにしました。
一泊食事付きで50ソモニ(≒650円)でした。めちゃくちゃや安い!!
マルギブ→ヤグノブ渓谷
翌朝起きて、オーナーさんに行き方を聞いたところ、マルギブから四駆車をチャーターして行くのが主流らしい。
料金は350ソモニ(≒4550円)。僕らが持ち合わせてる現金は250ソモニ…足りない。
なのでヤグノブ渓谷まで20キロ歩くことにしました。しかも20kg近いバックパックを背負いながら…、アホすぎる(笑)
そうと決めたらすぐ出発!!
宿を出て少し峠を登って行くとこの絶景!!RPGの世界に迷い込んだかのよう。
峠を越えると、ヤグノブ渓谷に繋がるメインロードが現れます。もちろん整備なんてされていない砂利道です。
岩山から流れ出る滝。どこからこんな量の水が出てくるのかな。
赤い花はポピーかな?綺麗に高山植物たちが咲いていました。
数時間歩いたところで、第一村人と遭遇。
ロバに乗ってる少年とこの絶景。
話してみるとどうやらヤグノブ人ぽいけど…、もちろん言葉は通じないので、結局彼がヤグノブ人だったのかは謎のまま(笑)
ようやく半分の10キロ地点に到着。と思いきや、急にどでかい雪の塊が出現。
アーチ状になっていて、その下を豪快に川が流れてました。
自然ってすげえええ。
売店なんてもんはなく、水が底をついていたのでここで水分補給。
少し休憩をし、ヤグノブ渓谷を目指し再び歩き始めました。
何回見ても飽きないこの景色。
この橋を渡ってみたかったけど、疲労困憊で下まで行く余裕もなく、ひたすら真っ直ぐ歩き続けました。
歩き始めてから5〜6時間が経ち、あと2キロ地点で休憩。さすがに足の限界がきてました。
休んでから小一時間が経ち、「くそー足が動かねえ」と嘆いていたら、なんと遠くの方から車の音が聞こえてきました。
一台の車が僕らの目の前に止まり、「乗ってけ」のジェスチャー。
まじかーーー!!!ありがてぇええ!!
疲労困憊のなかで僕らの目の前に現れた救世主。ありがたく乗せてもらいました。
数分車に揺られ、遂に念願のヤグノブ人の村に到着。
ヤグノブ人の集落
ヤグノブ渓谷沿いにいくつかのヤグノブ人の村が点在しています。この村は奥の方にあるNomikonという小さな村です。
車に乗せてくれた運転手さんは1〜2時間後にこの村を出るとのことだったので、駆け足で周辺を散策して一緒に帰ることにしました。
さすがに自力でまた20キロ歩くのはしんどいので(笑)
数時間の滞在で見たものを紹介していきます!!
この村には、日干しレンガと石で作られた家が5〜7棟くらいありました。そのうちの数棟は家畜用だったり、貯蔵庫になっていました。
おそらく家族だけで暮らしているのだと思います。
何で卵をケージに入れて干しているんだろうと思い、近づいてみると中央アジアの保存食「クルト」でした。
クルトは中央アジアで食されている乾燥チーズです。めちゃくちゃ硬いチーズなんですが、ほんのりヨーグルトの味がして美味しいんです。
しょっぱ過ぎて嫌いな人多いかと思いますが…。
村の周辺には、ロープに繋がれた馬がいました。
農場もあったので、ここの人たちは自給自足の生活をしているそう。
村を散策した後は、少し離れにある学校まで駆け足で行ってみました。
中を覗いてみたけど、もう何年も使われてない感じでした。
おそらくヤグノブ渓谷の子供たちは、近くの大きな村の学校まで行ってるのかな?
それにしても絶景広がるこの渓谷に学校があるなんて、凄すぎる!!
学校から戻ってきたら、家に招待してもらい、有り難くご飯を頂きました。
山羊の生クリームと彼らが狩猟した鹿の肉、ナン、チャイ。
中央アジアで初めて鹿の肉を食べました。
車に乗せてくれた運転手さんとヤグノブ人の山羊使いが交渉中。
どうやら運転手さんが山羊を購入するためにヤグノブ渓谷まできたらしい。
中央アジアの旅で山羊使いを沢山みてきたけど、実際にこうやって売買している光景は初めて見ました。
泣き喚いてる山羊を見て、僕らが普段食べている食事に感謝しなければと思いました。
最後に記念撮影!!
もう少し周辺を散策したかったけど、一泊したところでまた次の日20キロ歩いて帰るのはしんどそうなので、これにてヤグノブ渓谷の旅は終了。
この後はタクフォンまで送ってもらい、ヒッチハイクでペンジケントを目指しました。結局ペンジケントに着いたのが夜中の12時…。疲れた足で彷徨い歩き、この日は合計30キロ弱歩いてました(笑)
どんな角度で寝てんねん!!
マイケルジャクソンのゼログラビティばりの角度。
まとめ
歩きすぎてめっちゃ疲れたけど、この旅一番の景色が見れたので満足でした。
世の中が発展し、あちこちでインフラが整い、近代化が進んでいくなかで「秘境」と呼ばれる地が少なくなっていると思います。だけどここヤグノブ渓谷はまさに「秘境」にふさわしい場所でした。
またいつかこの地に戻って、深掘り旅したい!!
皆さんもぜひ訪れてみてください!!
旅の様子をYouTubeで発信していますので是非見てみて下さい!!